●バンディッシュの紹介を動画サイトで始めます。

こちらで師の作ったバンディッシュの歌詞の紹介をしていこうと思っていましたが、歌詞だけでなく、音源も一緒に紹介しないければ、バンディッシュとして成立しないと思い、音声動画のチャンネルを開設しました。タイトルは「旋律廊〜Raag Gallery」。音声と動画のインスタレーションというコンセプトでどんどん増やしていこうと思うので、ときおり覗きに来てみてください。

旋律廊〜Raag Gallery

 

●バンディッシュの歌詞の翻訳について

「ラーグとは、インド音楽における抽象的コンセプトである。それは、想像の種であり、演奏者の熟考、深い思索、それから実際の演奏などを通し、巨大な樹になるべく成長していく。実際の演奏の場で、ラーグは、演奏者の知性と想像力により形づくられていく。ラーグのもつ無限の表現の可能性は、どんな媒体にも閉じ込めることができない。しかし、音楽家たちはラーグを、凝縮された小さな種の形、あらかじめ曲として半分構成された「バンディッシュ」の中に、封じ込めた。

バンディッシュは、広義的にいえば、特定のラーグ(旋律)と、タール(拍子)、ガート(音楽形式)を内包させた、半既成曲、という風に言えるだろう。インド古典声楽におけるバンディッシュは、スワル(音)とラヤ(拍)により形成されるが、その上に乗る言葉は、意味があったりなかったりする。バンディッシュのおもな目的は、ラーグやガートの設計図を常に演奏者に指し示し、どのような表現が可能なのか、さまざまな方向性を探る手助けをするということだ。演奏家たちは、バンディッシュの枠組みを土台にし、自分たちの能力に応じてラーグの詳細を提示したり、ガートを展開していくのだ。」

Enlightening the listener-バンディッシュからの引用

 

上記したものは、師の執筆した「Enlightening the listener」のなかの「バンディッシュ」という項目からの引用です。

以前、ここに先生の作られたバンディッシュの歌詞を少しずつこちらに紹介すると述べましたが、バンディッシュとは、特定のラーグ、タールから作られた音楽としての表現の種子であり、そこにのる歌詞に特段の重要性はないという、師の考えを尊重し、紹介の方法を少し変えようと考えています。

師の作られるバンディッシュは、師の美意識があちこちに散りばめられた非常に細やかで美しいもので、そこにのせる言葉もその旋律の妙を邪魔することない美しい響きと意味をもつものです。

歌詞だけを切り取って紹介してしまうと、その意味性の方に焦点が集まってしまうのでは、と師の意図と反する方向へ読者を誘導するではないかという危惧があったので、歌詞だけを翻訳し紹介する、というのはやめようと思いました。

とは言え、キヤールではなく、ライトクラシカル ではその歌詞の意味も大きな意味をもつことになります。しかしそれも、どのように旋律の上に美しい言葉の響きが乗るか、ということに重きが置かれていることも事実です。文学的美意識とはまた違う音楽としての言葉のあり方を、もう少し自分でも表現できるといいと考えています。

以前翻訳して紹介したものはそのままこちらにしばらく残そうと思いますが、また違うかたちでみなさんに紹介できるといいなと考えておりますので、しばらくお待ちくださいませ。

 

〜以下に、以前こちらに載せていた文言も全てそのまま残しておきます。〜

 

わたしの北インド古典声楽の師、Dr. Prabha Atreは、歌うすべての曲をみずから作詞、作曲しています。

そしてわたしたち弟子が師から受け継ぐものは、すべて先生のオリジナルの曲です。

 

そのそれぞれの曲がとても女性的で繊細な表現であるとともに、学者でもある師の、非常に思慮深い、機知に富んだアイデアやエッセンスのたくさん散りばめられた作品になっています。

これらを少しずつ、日本語にしたものをこちらに紹介していきます。

 

スワランギニー 朝〜午後のラーグ
スワランジャニー 夕刻〜夜のラーグ
スワラランギー ライトクラシカル