ガート展開のプロセス

ガートの展開プロセス

バンディッシュは、それぞれのガート(ラーガ音楽の音楽形式、ジャンルの意)を展開させるための主要な柱のようなもので、その周りに特徴的なフレーズを展開させてゆくことによって、発展していく。フレーズの選択は、そのガートによって異なる。バンディッシュの部分以外、どのガートであってもフレーズの即興表現により展開される。

ガートの展開は、通常、いくつかの導入アーラープフレーズから始まる。その後、テンポとリズミカルなサイクル、タールを確立するため、バンディッシュが演奏される(バンディッシュの前半部分、スターイのみ、もしくは前半後半、両方であることもある)。

 

Raag Kalavati Opening aalaap  ラーグ・カラヴァティ導入アーラープ

 

ガートの展開はまず、中間オクターブ(マッディヤ・サプタック)、低オクターブ(マンドゥラ・サプタック)の音のフレーズで始まる。いくつかの即興で展開されたフレーズの後、演奏者は、バンディッシュの、ムクラー(スターイの始まりのライン)に戻ってゆく。即興フレーズを演奏し、ムクラーに帰る、と言う繰り返しを、即興フレーズの中の音を少しずつ上昇させながら発展させていく。

フレーズの展開が上のオクターブ(タール・サプタック)に届いたら、アンタラー・ムクラーに、その即興フレーズを帰結させる。

 

Raag Kalavati Bandish ラーグ・カラヴァティ バンディッシュ

 

Raag Kalavati スターイーのムクラーに戻るフレーズの例

 

 

ムクラーのラインだけが、即興展開をしている間じゅう繰り返されるため、常にすべてのバンディッシュが演奏されるわけではない。最近では、ヴィランビット・キヤール(非常にゆっくりなテンポで展開されるキヤール、キヤール演奏の最初に展開される部分)では、スターイ・ムクラーがアンタラー・ムクラーを使用する目的を、効果的に担えるようになっているため、アンタラーのバンディッシュは、割愛されるようになってきている。

 

即興で使われるフレーズの種類それぞれ、特定の順序に即して展開されていく。

まずアーラープセクションから始まり、3つのサプタックで発展、展開させていく。アーラープは、ガートを示す基礎的な素地を作る機能を果たすため、ほかの種類のフレーズに比べ、そのボリュームは大きくなる。アーラープとボル・アーラープは重複展開する。

 

3つのサプタックで展開するアーラープの例

 

その後、ボル・ウパジ、サルガム、最後にターン、と言う順序が普通だが、ときおり、その順番が前後したり繰り返されたりすることで、さらに印象的な表現をつくり出せる。

サルガム
ターン

 

 

演奏のテンポは、それらの展開が進むにつれ速くなっていく。メロディの進行とリズムサイクルは常に、即興フレーズをする中、認識され続けている。

ガートの展開中、即興フレーズは常にリズムサイクル(タール)の1、2周ほどで展開され、美しく、ムクラーに戻ってこなくてはならない。ムクラーの特定の音節は、サム(タールの1泊目のビート)で強調されなければならないため、ムクラーに定期的に帰結する即興フレーズ展開は、緊張と緩和をともなう、エキサイティングな感覚を引き起こす。サムが強調されることにより、即興のフレーズ展開の完了の感覚を強く与える効果があるのだ。

そして、タブラー伴奏者は、適切なタイミングで即興演奏を入れ、サムの効果を高める。

演奏中、頻繁に起こる、サムに着地するエキサイティングな瞬間に気づくと、インド古典音楽鑑賞は、より楽しいものになるだろう。


                                    

all audio guidance by Dr. Prabha Atre


◆このページの内容は全て、Dr.Prabha Atre著 「Enlightening the Listener」からの翻訳です。

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