ライト音楽、ヴィジュアル音楽

ライト音楽

 

 

ライト音楽では、歌の歌詞が重要であり、ラーグの存在は偶発的なものによることも多い。

音楽の助けを借り、言葉と、その感情的な内容を鮮やかに、色彩豊かに表現することがライト音楽のコンセプトである。そこで表現される歌詞のために、音楽が存在していると言ってもいいだろう。歌詞であつかわれる言葉の、発音、句読点、感情的な内容が最も重要になってくる。音楽の重要性は二の次のなり歌詞の重要度が前面に出ている。音楽は歌詞のストラクチャーと混ざり合い、それ自身の意味を失う。曲も、ラーグにもとづいていてもいなくてもよい。言葉による感情的な表現をするのに、さまざまなラーグのエッセンスを拝借し、いくつかのラーグの影を、1つの曲の中から見出すことはよくある。

クラシカル音楽、もしくはライトクラシカル音楽においては、半既成曲(バンディッシュ)の歌や曲が、ラーグを構築する材料の一部を形成しているため、ラーグ音楽を構成する、ざまざまなフレージングによる精緻化が不可欠だ。

しかし、ライト音楽のカテゴリーでは、曲そのものがすでに完全な形となっているため、フレーズを通したさらなる精緻化がなされる場合と、なされない場合がある。

ライト音楽の形式、バクティギート、バジャン、ギート、ガザルは、それぞれの歌詞の持つテーマと、音楽形式それぞれの構造の違いによって分類される。

バクティ、バジャンは賛歌、ギート、ガザルは、さまざまな感情を表現する。そこで歌われる詩は、特定のテーマ性を持っており、歌詞のボリュームも大きい。

ライト音楽では、チョター・キヤール、トゥムリー、ダードラー、フォーク音楽と言った、クラシカル音楽からフォーク音楽に至るまで、そこで使われる歌詞だけでなく、その形式の展開様式など、自由に拝借、またはそれら複数をミックスして表現することができる。

ベースになるスケールから逸脱は唐突に、明白に、そして急速になされる傾向があるが、歌詞と曲のスタイルがその音楽表現を支配しているため、それでも独特の音楽構造をキープして演奏が続けられる。また、クラシカル音楽の素養を持つ歌手らから、ライト音楽にも、古典的な基礎が持ち込まれ、その形式に従って扱われることも多い。

ガザル

 

ラーグ:ミシュラ ブープ カリヤーン

タール:ダードラー

歌詞

スターイ

 

mere zindagee ke raahi, mujhe chodakar na jaanaa 

メレ ズィンダギー ケ ラーヒ ムジェ チョダカー ナ ジャーナー

mere saath sirf too hai, tere saath hai zamaanaa||

メレ サートゥ スィルフ トー ヘイ、テレ サートゥ ヘイ ズァマーナー

 

アンタラー

 

yeh hamaaree zindagee bhee, kyaa gazab kee zindagee hai 

イェ ハマーレー ズィンダギー ビー、キャー ガザブ キー ズィンダギー へー

kabhee muskuraa ke ronaa, kabhee ro ke muskuraanaa ||1||

カビー ムスクラー ケ ロナー カビー ロ ケ ムスクラーナー

 

日本語:スターイ:人生の朋友よ、わたしの元を去らないで あなたは唯一人の友 世界の全てがあなたそのもの

アンタラー:わたしたちのこの人生、何とおかしなことか 時にわたしたちは笑顔で泣いて 時にわたしたちは泣きながら笑うのさ 

 

 

バクティギート

ラーグ:ミシュラ パッタディープ

タール:ケヘルワー

 

歌詞

スターイ

 

nisa dina gaaoon mangala naama 

ニサ ディナ ガーウーン マンガラ ナーマ

shree raama jaya raama jaya jaya raama ||

シュリー ラーマ ジャヤ ラーマ ジャヤ ジャヤ ラーマ

 

アンタラー

 

dukha more prabhu tuma hee jaanee 

ドゥカ モレ プラブー トゥマ ヒー ジャーニー

tuma bina kauna sahaaya kare

トゥマ ビナ コウナ サハーヤ カレ

daera naa kara too dookhana haara ||1||

ダエラ ナー カラ トゥー ドゥーカナ ハーラ

 

日本語:スターイ:夜も昼も あなたの吉兆の名を唱えます シュリーラーマ、ジェイラーマ、ジェイジェイラーマ

アンタラー:神よ あなたお一人がわたしの悩みを知っている あなたがいなかったら 誰がわたしを見守ってくれるだろうか 遅れないでください 悲しみに打ち勝つおひと

 

all audio guidance by Chetna Banawat

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ここまで紹介してきた形式が、北インド古典声楽における音楽形式だ。それぞれの形式間の境界線は強固ではなく、あいまいであるため、一方を他方と区別するためには訓練された耳が必要とされる。

音の生成と音の組み合わせ、その表現、プレゼンテーションは、音楽形式に応じ、異なる。

 

ヴィジュアル音楽

 

ヴィジュアル音楽とは、映画や舞台などで、特定のシチュエイション、またはシーンにおける効果を高めるためのBGMとして演出され、構成された、視覚的な要素をともなう音楽だ。しかしこれらはまた、ビジュアルとは独立して演奏することもできる。しかし、その音楽の内容に、映画、舞台のシーンありきで作られた音楽であるということは、容易に気づくことができるだろう。

インド古典音楽からトライバル音楽にいたるまで、これらの音楽がダンス、舞台、映画などといったメディアで採用されると、各メディアに適するような加工を施される。したがって、それらのメディアそれぞれに、別のカテゴリーの音楽とは区別可能な、何か典型的な形式が存在する。


                                   

◆このページの内容は全て、Dr.Prabha Atre著 「Enlightening the Listener」か

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